お知らせ

2020.09.25 2020年度通訳案内士スキルアップ研修を開催しました

関西観光本部では、2020年8月26日(水)~27日(木)の2日間、通訳案内士の皆様が質の高いガイドサービスを提供できるよう、関西の観光資源や日本文化等の様々な魅力について紹介する「通訳案内士スキルアップ研修」を開催しました。

当日は33名の方が参加され、「充実した良い研修でした」「カリキュラムの構成に感心しました」などの声を頂き、大変好評でした。今後も引き続き、さらなる改善・充実を図ってまいります。

 

7つのカリキュラムの概要

①ワールドマスターズゲームズ2021関西の魅力と地域のおもてなし

講師:(公財)ワールドマスターズゲームズ2021 関西組織委員会
事務局次長(大会・交流担当)  川村 泰正氏

ワールドマスターズゲームズ(WMG)は、概ね30歳以上であれば誰でも参加でき、4年ごとに開催される世界最大級の生涯スポーツの国際総合競技大会です。2021年5月にアジアで初めて関西各地を会場に開催されることになっております(海外および国内の新型コロナウイルス感染症が落ちつくことを前提に準備が
進められており、開催の最終決定は11月に公表の予定)。今回の研修では大会概要に加え、関西広域で開催される大会の魅力と、世界から集まる競技者への
おもてなしなど、主催者の取組みについてご紹介いただきました。大会開催にかかわる経済波及効果は1,461億円、大会レガシー効果は1兆868億円と推計
されています。過去のWMG開催期間中の国外選手の滞在平均日数は15.8日と長く、通訳案内士の活躍が期待されています。

 

②庭園観察 〜観えない思いを察して〜

講師:御庭植治株式会社 
代表取締役 小川 勝章氏 (次期12代小川治兵衞)

並河靖之七宝記念館、無斴菴、松花堂庭園など、先人たちが思いを託した御庭をご紹介いただきながら、庭園の鑑賞方法などについてもご説明いただきました。
まず鑑賞に最も適した場所は、床の間などの主がいらっしゃる特等席であり、そこに座って見ることで御庭に近づくことができるのだとか。同じ庭でも季節に
よって、また、1日の中でも昼間、陽が陰った頃、月明かりの中など、一期一会の出会いがあります。また時を超え、御庭が出来た当時の姿を、起伏、石組み、
常緑樹の松から想像することもできることなど、作庭家の視点での鑑賞ポイントをお聞きすることで、奥深い御庭の世界に触れるよい機会となりました。

 

③ウイズ・ポストコロナにおける訪日旅行トレンド

講師:(一社)日本旅行業協会 国内・訪日旅行推進部    
訪日旅行担当部長 山田 和夫氏

日本の訪日外国人客数は新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年4月から4か月連続で前年同月比99.9%減となるなど大きな打撃を受けております。
また今後、訪日外国人旅行者のニーズはこれまでから大きく変わることが予測されています。そこで今回の研修では、各国からの訪日需要や旅行目的、
旅行者が重視するものなど、ウイズ・ポストコロナにおける訪日旅行トレンドの変化についてご説明いただきました。今後の訪日外国人旅行には①品質、
②安全衛生管理、③地方誘客の3つのキーワードに対応する取組が求められます。その他、出入国規制の緩和や需要回復の順番といった各国における
最新の対応状況や、ガイディングにあたっての注意事項、各業界のガイドラインなどについてもご紹介いただきました。

 

④お客様目線で考えると盛り上がれる!? アニメツーリズムへの理解

講師:株式会社スティフテ(Strategy & Tactics for Travel & Entertainment Inc.)
代表取締役 香川 剛氏

近年、訪日外国人旅行者の目的やニーズが多様化していますが、アニメ作品のモデルとなった場所を訪れる「アニメツーリスム」を目的とする方々も増えており、
日本のアニメが世界でどのように知られているのかを把握しておくことは、より円滑なコミュニケーションに有効です。今回の研修では、国別・世代別・テーマ別
(スポーツ、ロボットなど)に、どんなアニメが人気があるのかといった世界のトレンドについて、日本のアニメの放映状況や翻訳展開状況、動画配信サービスの
国別再生数などの様々なデータをもとにご紹介いただきました。日本であまり知られていないコンテンツが特定の国では人気があったり、日本で人気のコンテンツ
が世界ではウケていなかったりと、意外な発見もあったのではないでしょうか。

 

⑤今も息づく茶道のおもてなしのこころ

講師:有限会社アリカエンタープライズ
代表取締役 田中 賀鶴代氏

茶道はもともと戦国時代のビジネスシーンにおいて、武士や商人がたしなんだ究極のコミュニケーション術であったそうです。
今回の研修では、「またこの方に仕事をお願いしたいと思っていただける人になる」ための、茶道の「おもてなし」についてご紹介いただきました。
「おもてなし」には、①まごころを持って成す「持成」 ②表・裏なしの2つの語源があるのだそうです。加えて、明治期に国際交流のためにつくられた、
どこでも手軽にお茶がたてられるように工夫した「テーブル茶道盆略点前」についてもご紹介いただきました。少しの経験と、「相手をもてなしたい」
という気持ちさえあれば出来るので、インバウンドにピッタリですね。

 

⑥体験できる和食文化の魅力

講師:Washoku Home Cooking
主宰 松本 真智子氏

ここ数年「日本ならではの体験」を求める訪日外国人旅行者が増加しており、また、ウイズ・ポストコロナにおいては旅行形態の多様化がますます進んで
いくことが予想されています。そこで、インバウンド専門の和食体験お料理教室を主宰されている講師に、外国の方への日本文化の魅力の伝え方や、
宗教・ベジタリアンなどの主義による食の禁忌への配慮などについてご紹介いただきました。例えば、一口にベジタリアンといっても15種類程あり、
卵・魚・乳製品・はちみつの4種類が食べられるかどうか聞くことで、何ベジタリアンかが大体わかるのだとか。また、「伝えたい気持ち」を一番重要に、
「思い出深い本物の体験」を提供されている講師の取組について、失敗談も交えて楽しくご紹介いただきました。

 

⑦雅楽の魅力について

講師:生田神社   
権祢宜 酒井康博氏

5世紀前後から大陸および朝鮮半島より伝来した、日本最古のオーケストラ「雅楽」の魅力について、起源・歴史、楽器の構造などの基本的な知識や
鑑賞ポイントについてご紹介いただきました。現代使われている「いい塩梅(あんばい)」という言葉は、篳篥(ひちりき)が奏でる「塩梅(えんばい)」
という特徴的な旋律から生まれたそうで、「打合せ」「千秋楽」など、雅楽を語源とする言葉は他にもたくさんあるのだそうです。笙(しょう)・
篳篥・龍笛(りゅうてき)の生演奏では、神秘的な音色に触れることができました。パイプオルガンと起源が繋がるといわれる笙は、不協和音を不快に
感じない唯一の楽器であるとのこと。ちなみに吹いても吸っても音が鳴ります。その他、装束の着付け体験もあるなど、優美な世界に思いをはせる
よい機会となりました。

総 評

参加者の皆さまからいただいたアンケートでは、「内容の濃いテーマと素晴らしい講師で大変良かった」「双方向のやりとり、実演もありとても
楽しかった」などのコメントをいただいております。また、「コロナ禍で先行きが不安で滅入っていたが、この時期にあったことが励みになった」
などのお声をいただいた一方で、「オンライン受講も対応して欲しい」とのご意見もございましたので、今後の実施方法について検討し、
さらなる改善・充実を図ってまいります。

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