関西観光本部では、2025年大阪・関西万博に向けて、関西のインバウンド観光が目指す姿を示す新たなグランドデザインの策定に着手いたしました。
着手にあたり、関西のインバウンド観光が目指すべき基本的課題(①「Kansai」が世界のデスティネーションになるために ②「インバウンド観光」を関西経済の柱に育てるために)に関し、我が国の観光に高いご見識をお持ちの有識者の方々の大所高所からのご意見を頂くため、「有識者会議」を8月4日に開催いたしました。
UNWTO駐日事務所代表である本保委員を座長に有識者7名からご意見を伺い、関西観光本部の理事長・副理事長がこれをお聞きしました。次回は、今回のご意見も含め、有識者としての「ご提言」をまとめていただく予定です。関西観光本部ではご提言を踏まえつつ、関西固有の課題や今日的な課題を含めてグランドデザインの案を作成し、広く関西の関係者の皆様のご意見を頂き、2021年度中に策定を予定しています。
(主なご意見)
論点①(「Kansai」が世界のデスティネーションになるために)では、「Kansai」のブランディング策を中心に次のようなご意見をいただきました。
- 「Kansai」という地名ありきではなく、海外の人に容易に認知してもらえるようなネーミングやブランディングが必要。
- 例えば関西のPRの際、地名の後ろに「Kansai」を必ず付けるなど、何度も目に触れるよう戦略的にやっていくことはどうか。
- インバウンドと国内観光は、本来、一体で考えるべき。
- 「関西」が持つ価値とは何か、どのような価値を実現したいのか、それをユーザーといかに共有するかが重要。価値の点では観光を広く捉え、関西で行われているあらゆる経済活動・社会活動を何らかの形で観光に結び付ける姿勢が重要。
- 国際往来再開後は各国間競争、地域間競争となる。関西で何をフラッグシップとして立上げるのか、世界の旅行者に興味を持ってもらえるような戦略を今から準備すべき。
- 関西の持つ多種多様な魅力を海外旅行者にどのように見せていくかが重要。各地を研ぎ澄ましながら、強い大阪・京都と他のエリアをどのように繋げるのか、あるいは、繋げないのかも考えてポートフォリオを広域で考えることが重要。
- 「Kansai」の認知を広めるために、関西空港を世界一面白い空港にするための仕掛けをすることも一案。
- 京都の伊根で見た舟屋が連なる光景は世界でもなかなか見られない。しかし食事をする店が普通の店しかない。もし伊根に世界的レベルのシェフが居たら、伊根はすぐにサンセバスチャンに匹敵する町になるのではないか。
- 食や茶などの文化的なものに富裕層が投資することが将来の観光資源になり得る。例えば富裕層に関西に投資をしたいと思わせる場や機会、きっかけ、コミュニティサロン的なものを作ることにより、面白い施設ができ、それが一般に開放されれば、観光資源となる。
- 2次交通などの受け入れ環境は重要。
- 今後の継続的な観光を考えると、2022年度中の文化庁京都移転を控え、他国に比べて少ない文化予算の拡大 を求めるべき。
- 「大阪・関西万博」への来場者をレガシーとして観光産業に結び付けていくことが重要。
また論点②(「インバウンド観光」を関西経済の柱に育てるために)では、滞在日数の拡大を中心に次のようなご意見をいただきました。
- 地域間での知恵出しや民間の予算、知恵をどこまで使うかもポイント。観光産業の重要性が高まれば積極的に参加する企業も増えてくる。そのような社会活動も重要。
- 消費の内容を細かく分析し、宿泊・飲食以外で伸ばせることは何か、という視点で考えるべき。また、生産額も大事。消費の原材料が他地域のものなら消費は流れてしまう。極力、地産地消で地元のものを使うことは非常に重要。それにより経済波及効果も増加する。
- 滞在日数拡大のためには旅マエ、旅ナカ、旅アトにどのような情報を流し、どのような楽しみ方ができるかという手法を磨く必要がある。
- ナイトエコノミーも必要。外国人が理解できるエンタテインメントとすることも重要。京都や大阪近隣に魅力的なコンテンツをいかにつくるかが大事。
- 関西が得意とする「笑い」は世界で求められている。「ユーモア」を文化として考え、浸透させていくと関西の力になるのではないか。そのためには「言葉はわからないけど笑えるもの」にする工夫が必要。
- 滞在日数拡大のためには「体験」「周遊」が重要。体験は「遊び」と「半分ビジネス」に分けられるが、欧州では家族連れでリゾート地の学会へ参加している等、ワーケーションもその一つ。
- 観光消費額は圧倒的に宿泊費のウェイトが高いため、観光消費額拡大に向けた方策としては新たなホテル・旅館の建設しかない、という議論になってしまう。例えば京都府では京都市内に宿泊施設が集中しており市外には少ない。関西の滞在日数拡大の議論は京都府内の京都市と市外の議論と同じ構図であり、大阪・京都以外のエリアにおける宿泊施設の状況分析と合わせた議論が必要。
- これからはスモールマス・マーケットの時代になる。例えば様々な趣味や嗜好単位のスモールマス・マーケットで有効なアプリケーションにより観光地の紹介、決済、ナイトエンタテインメント等に活用できるようにすることが消費拡大につながる。
- 関西に多くの海外旅行客に来てもらうために、文化・スポーツを含めた様々なイベントを頻繁に実施することが必要。